休日。初夏の昼下がり。
冷房の効いた電車。私はドア付近にもたれ掛かり、流れゆく街並みを眺めていた。
必死で歯を食いしばり、腹痛に耐えながら。

思えば昨日は友人の結婚式で、豪勢なフランス料理をたらふく頂いていた。

そして今朝、いつもは食パン一枚なのに、何を思ったかご飯を炊き、味噌汁を作り、卵焼きを作り、納豆ご飯を食べた。ご飯はおかわりもした。

自分としては食べ過ぎである。

そこへきて、電車を待つホームで冷たい缶コーヒーを一気飲みした。暑かったのだ。お腹が急激に冷えたところで、滑り込んできた電車は肌寒いぐらいに空調が効いていた。

何重にも重なった負荷に、私の腸は金切り声を上げた。

腹痛とは、寄せては返す波のようである。猛然たる苦しみが押し寄せてきたかと思えば、一転、穏やかなひと時が訪れる。それも束の間、驚くような高波が再び、容赦なく叩きつけるのである。

息を荒げ、下腹部を手で強く抑え、眉間に皺を寄せて天井を見上げながら、私は思う。

「これは過去最大の大波や」。

電車は特急であった。次の駅まではたっぷり10分ある。この10分をどう生きるかで、人間としての尊厳が左右される。だが、一刻の猶予もない。

力を入れすぎて、背中からふきらはぎに至る体の裏側の筋肉は、もはや感覚がない。冷房の風が体を撫でるだけで、致命傷ともいえるダメージがやってくる。意識はすーっと遠のいていく。

「波はこんなに高くなくてもいい。ちゃぷちゃぷとさざ波が足を洗うくらいがいい。南国のリゾートみたいな、穏やかな海がいい。……ここはタヒチか?そうや、タヒチや。」

電車は駅に着く。

よろよろとホームに降りて、階段をそろそろ下り、記憶の限り一番近いお手洗いに転がり込む。

そこには白い砂浜と水上バンガロー、色彩豊かな魚が泳ぐ青い海の楽園が広がっていた。

今年の冬は寒いですね。夏が恋しいです。
みょうが、しょうが、青ネギ、大葉、ごまをたっぷり入れたつゆで、冷やしそうめんが食べたい。トマトもいいね!
そんな夏が早く来てほしい。

文/荻 ホジロウ

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