ドトールでパソコンを広げて作業していたら、「長時間の勉強はご遠慮ください」と書かれたボードを持って店員のおばちゃんが巡回してきた。
これはまずい。すでに2時間ぐらい、コーヒー1杯でこの場所を陣取っている。
しかしおばちゃんの矛先は、医療系のテキストを広げてテスト勉強をしている、隣の女の子に向けられた。透明の赤シートを使いノートを広げて書き込む様は、なるほど、いかにも勉強だ。
おばちゃんは女の子の目の前でボードを掲げ、「長時間の勉強はご遠慮ください!」とボードに書かれた言葉をそのまま言い放った。
婉曲な言い回しはなし。おばちゃんの対応は毅然としていた。
ただ、僕は知っている。彼女はほんの10分前に来たばかりだということを。
おばちゃんに罪はないが、10分で店を出ろと言われるのはさすがに理不尽である。これがお昼時の富士そば渋谷店ならば話は違う。食べ終わってぼやぼや座っていようものなら、店員・客のサラリーマンの両方から白い目で見られてしまう。
しかし、ここはドトールだ。おばちゃんの攻撃を受けた女の子もさすがに「なんでや」という表情で無言の抗議をした。
ここで突然、自分が甘い汁をちゅーちゅーと啜っていることに気づいた。長時間粘っているにもかかわらず「おっさんぽいから注意しにくい」「パソコンだから勉強してるか判別しにくい」などの理由だけで僕は、おばちゃん攻撃からのうのうと逃れている。当然、女の子の正義感は、僕を批判するだろう。むぅ。
僕はいっぱしのMANである。BOYではない。MANたるもの、甘い汁より苦いコーヒーである。
僕はそそくさと店を出て、エスプレッソが飲めるタリーズに向かった。
コンビニのコーヒーも当たり前になってきました。一緒に売り出されているドーナツの誘惑たるや。そのうちふわっふわのパンケーキとかエッグベネディクトもコンビニで食べられるようになるんでしょうね◎
文/荻 ホジロウ イラスト/ luck-mook